床材はどのようにしますか?と言われたら、何を考えてどう答えますか?
最終的に「住宅メーカーが持ってきた床材のカタログの中から自分のイメージに合うものを選択する」としても、どのようなことを考えるべきで、どのような選択肢があるのかを知っておくことは重要です。
家と身体が直接触れる機会が一番多いのは床です。また、床は視覚的にボリュームが大きいので、部屋の雰囲気に与える影響も大きいです。気持ちのいいストレスのない床に仕上げることは、その後の生活にかなりの影響がありますので事前によく検討しておきましょう。
今回は私がこれまでに住んできた家や我が家の仕様を交えながら床材についてお話したいと思います。
私がこれまでに住んだ家の床材
これまでに色々な家に住んできましたが、家を建てる段階になるまで床材について深く考えたことはありませんでした。今にして思えばということを挙げてみます。
①社宅
物心ついた時、父の会社の社宅に住んでいました。公団住宅のイメージです。部屋は全室畳、廊下やキッチン、洗面所はフローリング、トイレはコンクリートタイルでした。
畳の座卓生活が快適というのが刷り込まれています。磯野家のような生活です笑。
茶の間の畳にはカーペットを敷いており、結構汚れていました。食事をこぼす可能性がある場所で畳やカーペットは厳しい印象です。畳に布団を敷いて寝るのが当たり前でした。
②借上げ一戸建て社宅
父の転勤で富士山の見える家に引っ越しました。軽量鉄骨系だったと思います。部屋や廊下はフローリング、キッチンや洗面所、トイレはクッションフロアでした。
クッションフロアは汚れが付きにくく、踏んだ感触は柔らかいですが、冬はスリッパなしでは冷たくて立っていられません。クッションフロアに物を置いているとカビが発生することがありました。特に水分があるもの(野菜とか)を直接置くのは避けた方がよさそうです。
和室が2部屋あり、畳に布団を敷いて寝ていました。布団の上げ下ろしが面倒ですが、布団を上げれば部屋として使うことができます。
③積水ハウスの軽量鉄骨
今の実家です。平成元年築。中学~高校時代を過ごしました。部屋やキッチンはフローリング、洗面所とトイレはクッションフロアです。茶の間はフローリングにカーペットを敷いて座卓です。
フローリングに直接触れると、夏はベタベタし、冬は冷たいので、長時間座って過ごすような部屋に敷物なしのフローリングは厳しいです。フローリングに物を落とすと傷がつき、その傷は修復不能だと知りました。
しかし、当時はピカピカの新築で何も不満は無く、すべすべのフローリングが当たり前だと思っていました。年に1回程度フローリングにワックスをかけていましたが意外に重労働です。
この家で初めて自分の部屋が割り当てられました。寝るときはフローリングに布団を敷いており、硬くて寒いし、布団とフローリングの間の湿気がすごかったです。実家の話は別の機会を設けたいと思います。
④アパート
学生時代の下宿。新築の1Kアパートでした。家の中は全てフローリングでした。座卓生活だったので、やはり敷物なしは厳しかったです。初めてベッドで寝る生活になりました。フローリングに布団を敷いて寝るよりもかなり快適でした。
⑤寮#1
就職して暮らした寮。比較的新しいマンションタイプのワンルームでバストイレ共同でした。床は硬いクッションフロアのようなものでした。狭い部屋だったので、ベッドの上か机の椅子に座って過ごしました。少々のことでは傷がつかない床でしたが、直接座る気にはなりませんでした。
⑥寮#2
転勤して暮らした寮。築40年のポンコツのワンルーム。リフォームして昔の2部屋を1部屋にした広さだけが取り柄の部屋。フローリングで座卓とベッドの生活でした。敷物とスリッパが欠かせません。
⑥社宅#1
結婚して暮らした社宅。同じく築40年のポンコツの3Kでした。公団住宅のイメージで全室畳の磯野家の生活に逆戻りです笑。キッチンや廊下はフローリング、トイレはタイルでした。
ポンコツだけどやはり畳生活は快適でした。どこでも横になれるし、傷つくとか全く気にせず過ごせます。ただ、タイルの目地の掃除は厄介です。
⑦寮#3
半年程度の長期出張でマンションタイプのワンルームの寮に入りました。時期を変えて3回ほど暮らしています。床はカーペット(事務所でよくあるタイプ)でした。ホテルの部屋のように土足のまま入室するので基本的に椅子やベッドの上で過ごしました。
コーヒーをこぼした日にはかなり残念なことになりました。素足で地べたに座って過ごしたいと思いました。
⑧社宅#2
ポンコツ社宅が建替えられ、新築のマンションタイプの社宅に引っ越しました。3LDKで全室フローリングです。これまでに接していたフローリングとは違い、歩くとふわふわしました。Panasonic製フローリングで下地にクッション材が入っているでした。ダークカラーでオシャレなのですが埃が目立ちます。
ウッディ・アーキ45耐熱 ナチュラルウッドタイプ | フローリング | 内装・収納(インテリア) | Panasonic
床材の色によって部屋の雰囲気が全く変わることを知りました。また、持っていた家具と雰囲気が合わないと残念なことになることも知りました。やはり物を落とすとフローリングが傷つき、修復不能でした。クッション材が入っているため上の階の物音は気になりませんでした。
⑨我が家
無垢材の床です。詳細は後述します。
これまでに住んだ家の床材から分かったこと
- 畳は素足地べた生活向き。傷は付きにくい。水分を含む汚れが付くと厳しい。
- フローリングは最も一般的。好みの雰囲気を演出可能。夏はベタベタ、冬は冷たいので素足地べた生活には向かない。傷がつくと修復は困難。ダークカラーは埃が目立つ。防音仕様のフローリングがある。
- カーペットは水分を含む汚れが付くと厳しい。
- クッションフロアの良い所は耐水性のみか。
- タイルを床に使うのは特別な事情が無い限り避けた方がよさそう。
我が家を建てるにあたって床材について考えたこと
色々な切り口がありますが、床材に対する人の感覚面を優先的に考えて、次に床材の機能面を考えました。素足地べた生活志向、床暖房は使わない前提です。
感覚面
何と言ってもフローリングに触れた時のヒヤッとした感覚と夏場のベタベタした感覚がなんとかならないかと考えました。色々調べた結果、これらの原因は高い伝熱性と低い調湿性だと分かり、無垢材を使えば解決できることが分かりました。
一般的なフローリングは一見すると木の板ですが、表面がコーティングされている場合には、木の本来の特性(低い伝熱性と高い調湿性)を活かせません。
悶々としていたある日、無垢材の床の住宅を見学する機会がありました。自然素材が売りの工務店の展示場でした。素足で触れた瞬間、直感的にコレだ!と思いました。これまでに知っていたフローリングとは全く別物で、ものすごく気持ちいい何とも言えない感覚でした。
機能面
床材に無垢材を使うとして、どのような種類や特徴、問題があるのか調べました。
伝熱性、調湿性
一般的なフローリングは合板です。板厚方向に複数の板を貼り合わせてできており、表面に薄い無垢の板を貼ったものが無垢材のフローリングとして販売されています。表面塗装やコーティングが無ければ無垢材としての特性を活かせそうです。つまり、低い伝熱性と高い調湿性により、”ヒヤッ”や”ベタベタ”が避けられそうです。
合板ではなく完全な無垢材であればその特性は最大限活かせることも分かりました。しかし、販売されている無垢材のフローリングは材料自体も高価ですが、施工費もかかるようです(板幅が小さいため施工箇所が増える)。
耐水性、防汚性
さすがにキッチンやトイレ、洗面所の床に無垢材を使うのは心配でした。表面塗装やコーティング無しで水や汚れを弾くことはできないかと調べた結果、自然素材のワックス(蜜蝋ワックスなど)を塗り込むと、無垢材本来の感触を損なうことなく水回りでも問題なく使えることが分かりました。
硬さ、柔らかさ
次に気になったのは、物を落とした時の傷つき易さや床に触れた時の時の硬さでした。床材が柔らかければ身体に優しいけど傷つきやすい、逆に硬ければ寝転んだ時の不快感や立ち仕事での疲れやすさに繋がります。
硬さや柔らかさは無垢材の木の種類を変えることで調整できます。広葉樹(オーク、チーク、ウォールナットなど)は硬く、針葉樹(スギ、ヒノキ、パイン、ヒバなど)は柔らかいという傾向があります。
なお、無垢材についた傷は、あまり酷くなければ濡れ布巾とアイロンによって復元できます。また、傷が残ったとしても、それは傷ではなく味だという心の広さがあれば大丈夫です。
耐熱性、変形
無垢材を過度に温めたり乾燥させると変形する可能性が高まります。床平面方向の変形があれば、板材の隙間が空く場合がありますし、床面外方向の変形があれば、床がデコボコになる場合があります。
これらは事前に十分乾燥させて正しい施工をすればある程度回避することが可能です。しかし床暖房と無垢材の相性は悪そうです。床暖房が使えないことは無いのですが、多少の変形は大目に見る寛容さが必要です。
メンテナンス性
実家のフローリングは年1回程度ワックスがけしています。経年劣化でフローリングの表面コーティングが剥がれてくると見栄えが悪くなります。
無垢材のメンテナンスはどうなんでしょうか。我が家の建築士には、入居直後に1回、入居1年後に1回の計2回ワックスを塗り込めば、無垢材にワックスが染み込んで効果が当分(何十年も)持続すると言われています。つまり、ほぼメンテナンスフリーです。
デザイン性
無垢材の場合、フローリングのように完全にデザインを統一することは困難です。板の一枚一枚で木目や色合いが違いますし、経年変化で色合いも変わります。
また、どうしても節が入ります。妻に言われたのが、「節に見られているようで怖いから無垢材は嫌」。聞かなかったことにしました笑。
全室節無しは難しいですが、材料を見ながらなるべく節が少ないものを人目に付きやすい玄関やリビングに使うことで節の影響を最小限に抑えることは可能です。
防滑性
小さい子どもやお年寄り、ペットが家の中にいる場合、滑りやすい床は問題になる場合があります。無垢材の床は一般的なフローリングと同様に滑りやすいです。また、特別な表面塗装で滑りにくくしたフローリングがありますが、無垢材は表面塗装をすると価値が無くなります。
無垢の木に近い感触で”ヒヤッ”や”ベタベタ”がなく、柔らかくて滑りにくい材料があります。コルクの床材です。コストや独特の香り、耐久性に議論の余地がありますが、安全第一の方は検討してみてください。
防音性
主に2階の音が1階に伝わらないようにという視点で検討されると思います。一般的には合板の上にフローリングを敷き詰めるので、合板とフローリングの間に防音材を入れたり防音性の高いフローリング材を使用して防音性を高める方法が考えられます。
1階でピアノなどの楽器を演奏する場合には、1階の床下に防音対策をすることも必要です。床にカーペットを敷くと吸音性が上がるため、部屋の音が少し小さくなります。その結果、他の部屋へ伝わる音も小さくなります。また、落下物の衝撃音も小さくなります。
しかし無垢材にカーペットを敷くなら無垢材にする意味がありませんね。防音については間取り面で考慮することもできます。静かさを求める部屋の上にうるさい部屋を配置しないという考え方です。
コスト
無垢材の床は高いという固定観念がありました。しかし、合板のフローリングを作るのは手間がかかりますが、無垢材は丸太から切り出すだけです。我が家のコストを開示しますので、一般的なフローリングと比べてみてください。
フローリングや無垢材、コルク以外の選択肢
畳
日本の心。我が家も全室畳にしようかと考えました。しかし、リビングダイニングは汚れる、水回りはNG、寝室はベッド・・・と考えていくと和室以外を畳にする選択肢はありませんでした。
クッションフロア
過去の負のイメージを引きずっています。現代の技術で改善されている可能性もありますが、自然素材派の我が家の選択肢には挙がりませんでした。コストや掃除のしやすさを優先すると、水回りの床材としては選択肢に入るでしょう。
タイル
トイレの床はタイルにするか無垢材にするか最後まで悩みました。目地の無いトイレ用のタイル(TOTO製)を検討していました。
我が家は素足地べた生活が前提なので、通常の部屋をタイルにする選択肢はありませんでした。しかし、前提が違えば、高級感を演出しやすい材料かもしれません。
瓦
我が家の建築士の案件で、床に瓦を敷いた強者がいます。平板瓦で石のタイルのような使い方です。土間のような空間でしたが、そこがダイニングになっていました。
我が家の仕様
上記を踏まえて決めた我が家の床材の仕様を紹介します。 水回りも含めて全て無垢板にしました。単価には大工の施工費は含んでいませんので材料費です(本実加工費込)。桧と杉の単価は随分違います。1F以外は杉にしてコストを抑えました。
長さ (mm) | 幅 (mm) | 厚さ (mm) | 坪単価(税抜) (円/坪) | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|
桧無垢板 | 4,000 | 120 | 33 | 22,000 | 1F用。特一等、本実加工。 |
杉無垢板 | 4,000 | 120 | 33 | 13,000 | 2F、ロフト用。特一等、本実加工。 |
無垢板は丸太からこのような形に切り出しています。本実(ほんざね)加工と言います。凹凸を差し込みながら床を組み上げます。十分な厚さがあるので、無垢板の下地の合板はありません。
例えば玄関はこんな感じに仕上がりました。
雑感
我が家に3年間住んでみて感じたことを挙げてみます。
狙い通り、夏場のベタベタ感は皆無です。いつもサラサラで気持ちいいです。
また、冬場のヒヤッとした感覚もありません。冬場の風呂上りに素足で歩いても程よい温もりを感じます。
水回りの汚れも問題ありません。蜜蝋ワックスの効果で水を弾くのですが、そのまま放っておくと水分が蒸発して水シミになります。しかし、ある方法によって水シミは完全に消せることが分かりました。記事の最後に記載します。
陶器を床に落とした際、割れないことが多々あります。床が柔らかいので衝撃を吸収してくれるようです。桧より杉の方が柔らかい感触です。
香りは桧の方が強いです。家の中に一歩入ると木のいい香りが広がります。住人は慣れてしまって気付かないのですが、お客さんは必ず木のいい香りがすると言います。
経年変化(主に日焼け)により色合いは大分変わりました。純真無垢な真っ白な板だったのが、よく焼けたワンパク娘に育っています。杉より桧の方が艶やかな感じがします。艶が出てきた床を数メートル離れて見ると、鏡のように景色が映り込んでいるのが分かります。
傷はあまり気にしていませんが、結構あります。焼け具合と傷でイイ感じの味が出てきています。無垢板の上でホットカーペットを使っても全く問題ありません。
(おまけ)水回りの無垢材に水シミが付いた場合の対処法
写真は2Fトイレの床です。手洗い器周辺の水シミが目立ちます。あるものを使って綺麗にします。
Before
After
使ったのはコレ!雑巾にレブライトを染み込ませて、床を拭き拭きすると、とても綺麗になります。劇薬なので取扱注意ですが、私はAmazonで普通に買っています。拭き拭きする時は念のためゴム手袋を使ってください。製造元サイトもご確認ください。
最後に蜜蝋ワックスで仕上げると完成です。塗りたてはしっとりしていますが、一日経つとサラサラで何も塗っていない感触に戻ります。入居直後にワックスを塗りましたが、その後サボっていました。3年目にして2回目のワックスです。でも、ブログネタのために2Fのトイレだけ笑。
ばっちり水を弾きます。これで当分放置だ~♪
蜜蝋ワックスとは
我が家で使っている蜜蝋ワックスは建築士のお手製です。蜜蝋ワックスは、蜂の巣を煮出して抽出した蜜蝋に植物性のオイル(エゴマ油など)を添加して作ります。蜜蝋ワックスを入手する方法は3つあります。
- 市販品を購入。でも、結構高価です。家中の床に塗ろうとしたらどれだけ必要なんだろうと思ってしまいます。我が家の床に塗った時は両手鍋に2杯分使いました。キロオーダーです。
- 完全自作。蜂の巣を仕入れて蜜蝋を煮出し、植物性オイルを添加。蜂の巣は入手困難で、蜜蝋を煮出すのも結構大変そうです。はっきり言って敷居が高いです。
- 半分自作。一番敷居が高い蜜蝋は購入。これに植物性オイルを添加。
今の蜜蝋ワックスが無くなったら、3番目の方法にチャレンジしてみようと思います。
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