今回は我が家を住宅メーカー並みの建築費で建てることができた手法を説明します。先に断っておきますが、住宅メーカーに丸投げして、カタログからチョイスという家造りとはかけ離れた手法ですので、施主側の手間は結構かかります。手間は惜しまないので、いい家を安く(適切なコストで)建てたい、という覚悟のある方向けのお話になります。
我が家の仕様は徐々に公開しておりますが、かなり高そうだと思われるかもしれません。
しかし、普通の会社員の私が湯水のごとく家造りに投資するのは不可能です。色々研究した結果行き着いた手法、それが分離発注です。分離発注で建築費を下げられるカラクリを説明する前にいくつかデータを示しておきます。
建築費のデータ
建築費とは土地代を含まない建物自体にかかる費用のことです。無い袖は振れないので、家造りをする上で費用問題は重要事項です。夢と現実の狭間で揺れつつ現実に引き戻されてしまうお金の話。でも詳細まで公表されたデータは少ないので、実際のところどうなの?と気になりますよね。
結局もう後戻りできない切羽詰まった段階で実際の建築費が明らかになり、あたふたするケースも多々あると思います。そうならないために、少ない情報もくまなく収集し、様々な切り口で分析し、建築費を下げる手法も勉強しておくことが大切です。
注文住宅の建築費の統計データ
我が家を建てた後、国からアンケートに回答するようにと書面が送られてきました。いくらかかった?という質問も含まれていました。このようにして収集したデータを統計分析しているのだと思います。
こちらは国交省から公表されている過去18年分の注文住宅の建築費(首都圏)のデータです。詳細は不明なのですが、エイやと全期間の平均値を出すと3,101万円となりました。
調査年 | 建築費(万円) | 調査年度 | 建築費(万円) |
---|---|---|---|
平成10 | 3,226 | 18 | 2,901 |
11 | 3,178 | 19 | 3,156 |
12 | 2,920 | 20 | 3,206 |
13 | 3,206 | 21 | 3,175 |
14 | 3,130 | 22 | 3,214 |
15 | 3,095 | 23 | 2,847 |
16 | 3,101 | 24 | 3,321 |
17 | 3,024 | 25 | 2,951 |
26 | 3,206 | ||
27 | 2,964 | ||
平均 | 3,101 |
我が家の建築費
我が家の建築費は以下のようになりました。項目毎に金額をまとめていますが、もっと細分化することも可能です。例えば、現場の仮設トイレが日額いくらかかるかというところまで分解できます(ちなみに税抜100円です)。
今回は、後で坪単価を比較する際に他のサイトに記載の坪単価と比較しやすいようにこのような形式でまとめました。各項目は税抜金額ですが、23番に消費税を記載しています。小計②や合計は消費税を加えた金額になっています。
ということで、総額3,600万円弱。この金額が住宅メーカーの建築費と比べてどうなのか、考察していきます。
内容 | 支払金額(税抜) | 備考 | |
1 | 大工工事 | 5,740,361 | |
2 | 木材 | 5,952,381 | |
3 | 左官工事 | 3,334,762 | 土壁、漆喰、玄関・勝手口土間など |
4 | 設計・監理 | 3,300,000 | 建築費の10%相当、建築確認申請含む |
5 | ユニット工事 | 1,919,924 | ガス、換気扇、キッチン天板、ユニットバス、IHコンロ、洗面台、食洗機など |
6 | 屋内給排水設備工事 | 1,141,095 | 屋内(トイレ2か所含む) |
7 | 木製建具工事 | 1,442,857 | 室内建具、一部サッシ、抽斗など |
8 | 瓦工事 | 1,370,000 | |
9 | 電気工事 | 572,306 | 照明工事除く |
10 | 基礎工事 | 1,262,520 | |
11 | 仮設工事 | 805,789 | 足場、クレーン、仮設トイレ、産廃処理など |
12 | 雑工事 | 714,749 | ブレース、通気金物、透湿シート、断熱材など |
13 | アルミサッシ工事 | 682,829 | |
14 | 板金工事 | 575,000 | 水切りなど |
15 | 内装工事 | 372,497 | 養生シート、金物、畳など |
16 | 瑕疵担保保険・工事保険 | 157,543 | 完工までの保険 |
17 | 現場水道・電気代 | 101,177 | 約1年分 |
18 | 施主支給 | 62,752 | トイレ金物、表札 |
小計① | 29,508,541 | 1-18の合計 | |
19 | 屋外給排水工事 | 387,350 | |
20 | 地盤調査・改良 | 710,000 | |
21 | 照明工事 | 220,900 | 照明器具費用除く |
22 | カーテン工事 | 223,511 | カーテン費用含む |
23 | 消費税 | 1,718,484 | 全項目の消費税 |
小計② | 32,768,786 | 19-23の合計+小計① | |
24 | 保証料・手数料 | 972,088 | (土地建物ローン)ローン保証料、手数料、印紙 |
25 | 水道加入金 | 173,300 | |
26 | 照明器具費用 | 499,400 | |
27 | エアコン工事 | 352,952 | エアコン代(2台)+1台移設含む |
28 | 外構工事 | 871,563 | |
29 | 引越代 | 104,952 | |
30 | 上棟 | 73,678 | 祝儀、弁当など |
31 | 地鎮祭 | 25,000 | |
合計 | 35,841,720 | 24-31の合計+小計② |
坪単価の粗相を斬る
建築費と聞いて最初に思い浮かぶのは坪単価というキーワードかもしれません。坪単価は1坪(3.3平米)当たりの建築費です。一見すると、坪単価に面積をかければ建築費の総額が分かり、住宅メーカー間のコスト比較も容易にできるのでとても便利そうです。
しかし、坪単価は便利なようですごく曖昧な指標です。もっと言えば住宅メーカー側に有利になるように自由に調整できる危険な指標です。ユーザー側は住宅メーカーが公表する坪単価だけに惑わされず、その背景を知った上で上手く活用する必要があります。
坪単価=金額/面積
で算出できますが、金額に何を含めているか、面積に何を使っているか、によって数値は簡単に上下します。そして、金額に何を含めているか、面積は何かという算出根拠は、坪単価を計算する側が自由に(坪単価が低くなるように)決めていて、算出根拠を明記しない場合すらあります。
坪単価を低く見せたい場合は、計算上の金額を小さくするか、面積を大きくするかによって調整できます(調整できること自体がダメなのですが)。金額を小さくするために、建物本体にかかる最小限の金額を採用するので、照明やエアコン、カーテンはおろか、屋外給排水工事の費用や消費税も含めない場合があります。また、面積には数値が大きい施工面積を使います。
そういう意味では住宅メーカー側(坪単価を低く見せたい側)が提示している坪単価はあまり参考になりません。一方、ユーザーが公開していて、算出根拠や金額の明細まで明記されているデータは非常に参考になります。そのデータを使って自分流の坪単価を計算し直して比較することも可能です。また、統計データも元データはユーザーが提供したものなので、一定の参考になると思います。
参考までに延床面積は建築基準法で定められた「建物の床面積」で、吹き抜けやバルコニーの一部は延床面積に含まれません。一方、施工面積は特に定義が無く、住宅メーカーが独自に算出する「施工した面積」です。延床面積には含まれない吹き抜けや玄関ポーチ、バルコニー、駐車場まで含まれる場合があり、
延床面積 < 施工面積
の関係になります。
我が家の坪単価
上記を踏まえて、以下のいくつかのケースで我が家の坪単価を計算してみます。
なお、我が家の延床面積は38.77坪(127.95平米)、施工面積は・・・ない・・・です。資料を見返してもありません。必要ない数値なので出していないのでしょう。
そこで私が計算してみた結果、施工面積は53.30坪(175.88平米)になりました。
施工面積=延床面積38.77坪(127.95平米)+玄関ポーチ0.89坪(2.95平米)+駐車場の内、外壁中心で囲まれた部分8.61坪(28.42平米)+ロフト5.02坪(16.56平米)と計算しました。
ケース1 住宅メーカーがよく使う算出法
金額には我が家の建築コストの小計①を用います。まさに家を建てる最小限の費用で、この状態で生活することはできません。生活できない家の坪単価・・・あまり意味がないですよね。面積には施工面積を用います。
坪単価①=小計①/施工面積=55.37 万円/坪
ケース2 住宅メーカーに支払うであろう金額から算出
小計②はケース1に屋外給排水工事、地盤改良工事、照明工事(照明器具費用は除く)、カーテン工事(カーテン費用含む)、消費税を加えています。しかしまだ生活できない家の坪単価ですね。我が家の場合、地盤改良工事という特殊事情が含まれます。面積には延床面積を用います。
坪単価②=小計②/延床面積=84.52 万円/坪
ケース3 建物にかかった総額から算出
合計はケース2にローン保証料、印紙代、水道加入金、照明器具費用、エアコン工事、外構工事、引越代などを加えた金額で、私が建物のために支払った総額です。
生活できる家の坪単価ですが、人によって金額が変わる項目が多数含まれます。なお、建物の登記は親戚にお願いしたため無償でした。また、土地の取得代や土地の登記費用は含んでいません。面積には延床面積を用います。
坪単価③=合計/延床面積=92.44 万円/坪
ユーザーが公開する住宅メーカーの坪単価(参考)
住宅メーカーの建築費用や坪単価については、例えばこちらの記事が詳しいです。とても綺麗にまとめられている素敵なサイトです。上記坪単価の算出ケースも参考にさせていただきました。
如何でしょうか?我が家を住宅メーカー並みの建築費で建てることができたと言っても許していただけますかね?駄目ですかね?汗
少なくとも計算条件によって坪単価が乱高下することは分かりますね。
坪単価まとめ
計算条件が定義されていない坪単価。この状況を悪用した住宅メーカーが多いことを認識してください。そして、計算条件を明記していない坪単価は鵜呑みにしないでください。我が家の坪単価を見て分かる通り、計算条件によって結果は大きく変わります。我が家の金額の部分を適宜組み換えて、ご自分に合った条件で坪単価を算出し直して比較してみてください。
分離発注とは
では、いよいよ本題に入ります。分離発注のお話です。家造りには様々な専門業者が関わります。設計、基礎、大工、屋根、サッシ、電気、水道、ガス、まだあります。これらの業者と施主が直接契約を結んで仕事を発注する方式のことを分離発注といいます。
ものすごく特別な事のように聞こえますが、実は昔の家造りは分離発注が普通のやり方でした。今でも田舎の昔ながらの家造りをしている業者は分離発注でやっているところもあると思います。いつしか効率優先の家造りがもてはやされるようになり、滅多に聞くことのない手法になりました。
住宅メーカーで家を建てる場合は、住宅メーカーと施主が一括請負契約を結びます。施主は費用をほぼ住宅メーカーのみに支払い、住宅メーカーはそのお金を使って各業者に仕事を振り分けます。
ここで着目したいのは、住宅メーカーから施主に提示される金額です。業者から出された見積金額(=原価+業者の利益)に中間マージン(住宅メーカーの経費・利益)を乗せた金額が施主に提示されているはずです(施主がその内訳を見分けるのは至難の業ですが)。したがって、施主は中間マージン分だけ余分に費用を支払うことになります。阿漕な商売をしているメーカーは、業者の利益すら削って自社を潤しているかもしれません。
原価+業者の利益で家を建てることができれば、施主も業者もハッピーですね。これを目指すのが分離発注です。
分離発注のメリット
中間マージンをカットすることにより、中間マージン分安く家を建てることができます。適切な費用で家を建てることができる、メリットはこれに尽きます。
分離発注のデメリット
- 施主が直接契約した業者をコントロールしなければなりません。監理業務を住宅メーカーの代わりに担うわけです。
- 施主が工事進捗に応じて業者へ代金を支払う必要があります。
- 分離発注に対応可能な業者が少ないため、業者の選択肢が狭まります。住宅メーカーは軒並み選択肢から外れることになります。
- 分離発注に対応可能な銀行が少ないため、住宅ローンを借りる銀行の選択肢が狭まります。
我が家の分離発注
デメリット1.対応
建築士に設計だけでなく監理業務もお願いしました。中間マージンをカットして、監理料を支払う、これでも十分お得です。それだけ中間マージンが大きいということです。
建築に関して素人の施主が監理業務を担うことは現実的ではありません。監理業務というのは現場のコントロールです。いつどの業者にどんな工事をしてもらうか。図面通りに工事ができているかを指示・確認する業務です。本来であれば設計担当と監理担当は別の人が行うべきなのですが、そこは建築士を信じました。
デメリット2.対応
ひたすら頑張りました。手間はかかりますが、やれないことはないです。我が家の場合、専門業者10社と工事請負契約書を結びました。これに加えて建築士と設計・監理業務委託契約書を結びました。ちなみに設計と監理の比率は4:3でした。
支払いのタイミングは、業者の仕事が完了した時点や金額が大きい場合は数回に分けて工事の進捗に合わせて支払いました。私が業者に支払った回数は170回を超えました。
デメリット3.対応
分離発注が得意な建築士を探しました。我が家の場合、伝統工法+土壁+分離発注という条件だったので、全てに対応可能な建築士を探し出せたことは奇跡に近いかもしれません。5年くらい探しました笑。
デメリット4.対応
メガバンクや労金は軒並みNGでした。地場銀行で分離発注に対応可能な銀行を探しました。デメリット2.にも関係しますが、170回も支払うって具体的にどうするの?と思われるかもしれません。通常、住宅ローンで借りたお金は、銀行から直接住宅メーカーに渡りますよね。施主が数千万円の現ナマを見ることは無いと思います。
我が家の場合、借入金を一旦私の口座に振り込みます。その口座は銀行が管理し、建築費以外に使うことはできません。私は業者から請求書が届くたびに銀行に出向き、その口座から業者の口座に振り込みました。自己資金から支払う場合は、自分の普通口座から業者の口座に振り込みました。どの費用をどの口座から支払うか、ここも管理しなければなりません。
分離発注の成果
住宅メーカー並みの建築費でこの仕様の家を建てることができたことが成果と考えています。もし、分離発注でなかったらいくらかかっていたのか?これは推論でしかありませんが、軽く10%(300万円)以上は高くなっていたと思います。
分離発注を考えてみようかと思う方へ
あまり馴染みのない分離発注ですが、メリットがありそうなので考えてみようかなと思う方へメッセージです。実は分離発注をすることで増える施主の負担はそれ程ではありません。
最も大変だった(でも楽しかった)事は、本当の意味での注文住宅に対応することです。分離発注によって必然的に建築士や工務店へ家造りをお願いすることになります。住宅メーカーの家造りが注文住宅と言われていますが、実は選択肢がそれほど無い中から選択していくことが多いと思います。カタログからチョイスと言ったら失礼ですが、でもそんな感じです。
しかし、本当の注文住宅は、施主がまさに無限の選択肢の中から決めなければなりません。建築士に聞かれることは、「どれにしますか?」ではなく、「どうしますか?」です。全ての項目に答えるための準備が必要です。選択問題と記述問題という表現が分かりやすいかもしれません。記述問題に答えるための勉強は大変です。しかし、その先には完全にあなたの希望を満たすいい家が待っています。
でも、安心してください。できる建築士ならば、あなたの要望を噛み砕いてこの案はどうですか?と提案してくれると思います。その案を受け入れられたら負担はかなり減ります。そのためにはフィーリングが合いそうな建築士を探すことも必要です。100%あなただけで答えを出す必要はありません。プロと相談しながら決めていけばいいのです。もちろん私にできることがあれば全力で応援させていただきます。
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