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ドクターMの家造りのすすめ

伝統工法、無垢の木、竹子舞、漆喰、いぶし瓦の家の主より

ブログ記事の書き方と心構え。研究者が論文の書き方と対比して気付いたこと。

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今回は、研究者の端くれの私が、僭越ながらブログ記事の書き方について論文の書き方と対比しながら解説したいと思います(自分のことは棚に上げておきながら汗)。

 

突然ですが、論文を読んだことはありますか?日本人の論文がNatureに掲載されたなどとニュースで取り上げられることもありますね。論文とは、研究者等が自らのフィールドに関連する学会等に成果を発表するもので、全世界に公開され、ネットで検索することもできます。著者が調査・研究したことについて、自らの解釈を通じて、新たな価値を発信するという意味ではブログの記事と似ていると思います。

 

私は仕事柄、論文を読むことも書くことも多いです。論文の構成(章立て)や各章に何を書くべきかは大体決まっていて、その書き方に沿っていれば、ある程度分かりやすい論文に仕上げることができます。

 

ブログを書くネタのイメージはあるけど、どういう構成で、どういう点に注意して書けば分かりやすくなるか、と悩んでいる方に、今回紹介する論文の書き方が少しでも参考になれば幸いです。

 

ところで、論文とブログには一つだけ決定的な違いがありますが、何だか分かりますか?その答えも記事中にあります。

 

論文を書く前の大前提

論文には新規性や独自性、学術的価値が求められます。新しいだけでは駄目で、何かの役に立つという価値も必要です。しかし、世界で最初に○○を発見したという内容でしか論文が書けないとすると、ほとんどの人は論文を書けません。

 

大抵の論文は過去の類似研究を参照した上で、類似研究で積み残した課題や問題点を指摘し、その課題や問題点について解決策を提示するという内容です。コピペは論外としても、先人の研究から1ミリでも進歩していれば論文は書けます。

 

ブログでも同様に、あの人が既に同じ内容の記事を書いちゃったから・・・と躊躇する必要はありません。何か一つでも違う視点の考察があれば、それはあなたの独自性です。正々堂々と記事にしてください。

論文の基本的な構成と書き方

題名

論文の最初に書かれるのは題名、タイトルです。日本語の論文であっても、タイトルは日本語と英語を併記します。タイトルは最も重要です。それは文献調査(読みたい論文を探す)の過程を見ると明らかです。

 

仕事で文献調査をする際、自分でやる場合もありますが、専門業者に特定のキーワードを連絡して、専用データベースで検索してもらうことが多いです。業者はこちらが指定したキーワードの類似キーワードも含めて、様々な組合せで検索してくれます(検索のプロ)。少し横道にそれますが、キーワード選定の際には、シソーラス(単語の上位/下位関係、部分/全体関係、同義関係、類義関係を網羅した辞典)を参照します。

その後、検索にヒットした数百本もの論文のタイトルリストが送られてきます。

 

次にタイトルリストから、読むべき論文の候補を絞り込み、再度業者に読みたい(可能性のある)論文のタイトルリストを連絡します。そうするとそれらの論文の概要リストが送られてきます。概要は1論文につき数百ワード程度です。

 

概要リストから、さらに論文本体を入手したい候補を絞り込み、再度業者に読みたい論文のリストを連絡します。そうすると論文本体のコピーが送られてきます(ちなみに論文1本のコピー代は数百円から数千円)。

 

ここまで絞り込んでも数十本になる論文本体に目を通し、最終的にコレだ!という論文に1本でも当たれば御の字です。ちなみにざっと目を通す場合は、論文の最初(緒言)と最後(結言)しか読みません。

 

この文献調査の過程からも明らかなように、タイトルに求められるのは、「論文の具体的な内容が分かる」に尽きます。タイトルだけを見て、論文を読むかどうかを判断するのですから。論文の内容を反映していない煽りタイトルは反則ですし、曖昧なタイトルだといくら内容が良くても読んでもらえない可能性が高まります。

 

このことはブログにも通じるものがあると思います。文献調査をGoogle検索に置き換えてみてください。先ほどの業者によるデータベース検索と同様に、Google検索はキーワードによって行われますね。

 

ブログの記事タイトルを見れば、「記事の具体的な内容が分かる」と同時に、主なキーワードが入っていて思わず読みたくなるような誘いがあるとなお良いでしょう。

 

ここで重要なのは、同じ内容を表すキーワードでも、検索されるのに有利/不利があるということです。論文の場合はプロが検索しますので、考えられるキーワードを根こそぎ入力して探します。

 

しかしブログの場合は、プロではない人が適当なキーワードで検索します。そうすると、どうしても検索されやすいキーワード(キーワードの組合わせ含む)が偏ってしまいます。

 

したがって、ブログの著者はそれを逆手にとって、自分のネタに関して検索されやすいキーワードを選定して、そのキーワードを使いながらタイトルや記事を構成すると検索上有利になります。SEO対策ですね。どんなキーワードが検索上有利なのか、それを調べるツールは世の中にいくつもあります。私も勉強中です。

 

しかし、これから記事を書こうと思っているネタについて、自分ならどんなキーワードで検索するかを考えれば、最低限外さないキーワードは見えてくると思います。また、検索アルゴリズムの進化によって、同じ内容を表すキーワードの有利/不利の差は縮まる時代がやって来ると思います。

 

極端な例では、検索されやすいキーワードを先に探して、検索ボリュームのある(=読まれる可能性の高い)キーワードを使って記事を書くという人もいるでしょう。ネタありきではなく、キーワードありきですね。私はそこまでの情熱は無く、書きたいことを書いているだけ(なので読まれない汗)。

抄録

タイトルの次に見られるのは抄録(Abstract)です。概要と言い換えてもいいでしょう。論文タイトルの下には著者情報があり、その下に必ず抄録があります。日本語の論文であっても、抄録だけは英語で書く場合がほとんどです。抄録に書くべきことは、どういう問題に、どういう視点で着目し、どういう手法で、どういう結果が得られ、どういう結論が導き出されたかです。

 

ブログではここまで書かなくても、記事の冒頭に「この記事で言いたいこと」「何に関する話題なのか(これはタイトルに書くべき)「タイトルには書ききれなかったことの補足」だけでも書くと読者に親切だと思います。

 

逆に、「この記事で言いたいこと」がスッキリ書けないとしたら、ネタを詰め込み過ぎていないか、論点がハッキリしているかなど、一度頭の中を整理するのが良いと思います。

 

基本的には一つの記事に一つの話題とした方が読者は読みやすいと思いますし、後で自己参照する際にも便利だと思います。よく一記事何文字以上必要かという議論を見かけますが、文字数には意味が無いと思います。「言いたいこと」が100文字で伝わればそれでいいですし、1万字必要ならばそれもまたいいでしょう。私は必要以上に文字数が多くなったりネタを詰め込む傾向があるので反省しています。

 

また、はてなブログの場合は編集オプションにある「記事の概要」を書いておくと、検索結果にタイトルと合わせて表示されるので、より親切です。

緒言

背景や目的を含む導入に当たる部分です。なぜこの研究をやる必要があったのか、研究の動機に当たる部分でもあります。論文ではここを必死に書きます。類似研究を徹底的に調査して、積み残した課題や問題点を炙り出し、自分の研究をやる意義を明確にする必要があるからです。

 

その際、引用箇所は明示する必要がありますが、類似研究の内容を丸々引用する必要はありません。論文のタイトルや発行元を記しておけば、読者は自ら調べることができますので、貴重な紙面を「引用」に割く必要はありません。

 

ブログでも公式ページやカタログ、他の方の記事等を引用することは多々あると思います。特に公式ページやカタログ等、リンク先を見れば分かることを、記事中に再掲する必要はないと私は思います。リンク先を見ただけでは分からないので特記が必要な場合などはこの限りではありません。

 

リンク先に飛ばずにブログの記事だけを見れば全てが分かるようにするという配慮や備忘録的意味、リンク先に飛ばれること自体を避けたいという観点もあるのかもしれませんが。特に後追い記事の場合は、参照先を記しておくだけで十分だと思います。

 

さて、動機に当たる部分ですが、ブログ記事を書く場合にもなんらかの動機があると思います。○○に困っていたとか○○を体験したとか。記事の冒頭に「この記事で言いたいこと」を書く理由があれば、読者はより納得して記事に入って行けると思います。

手法と結果

理論や実験、解析などの手法の説明や得られた結果等を書きます。論文では最もボリュームがあり、著者にとっては実際にやったことなので書きやすい部分でもあります。ここで重要なのは、「再現性」です。論文の読者が、論文に書かれた通りにやれば同じ結果が得られるように、仔細漏らさず正確に書く必要があります。STAP細胞論文ではこの「再現性」に問題があったんですね。誰も再現できないと。。

 

ブログでも、記事のメインに当たる部分、具体的な事を書いていく部分があると思います。記事の内容によっても変わりますが、「再現性」という観点で見直すと、書き漏らした条件などが見つかるかもしれません。

議論と結言

得られた結果に対する考察に当たる部分です。解釈と言ってもいいでしょう。考察や解釈こそが独自性を出す大事なところ=論文の価値であり、そこから論文の結論に導きます。同じデータや結果を見ても、人によって解釈は変わり、全く違った結論になる場合もあり得ます。

 

ブログで取り上げたネタが、例え既に大勢の人が取りあげた内容であったとしても、あなた独自の考察・解釈・切口・感想・味付けなどが一つでもあれば、そこに新たな価値が生まれます

 

論文の最後には、それまでの議論を通して導き出される結論を書きます。論文の緒言で提起した問題の答えを書くことが必須です。時間の無い読者は緒言と結言しか読みません。そこで更に興味をそそられると、やっと論文の中身が読まれます。

 

ブログ記事も同様であると心得ましょう。もっと言えば最後まで読んでくれる読者は少ないと想定し、最初に「読みたくなるような結論」まで書いておくといいでしょう。

 

文献調査して論文を読む目的は、「知りたいことがあるから」です。ブログの検索も大抵の場合はそうでしょう。読者(検索者)がやっと辿り着いたあなたのブログ。記事タイトルを見ると、知りたいことが書いてありそうだと思ったに違いありません。

 

記事の出だしを読むと読者(検索者)が知りたいことが以降の記事に書いてありそうです。でも、最後まで読み進めた結果、知りたいことが書いてなかったとしたら・・・?少し残念な気持ちになりますね。

 

読者(検索者)が知りたいであろうことを想像して、その答えを用意しておくという書き方もいいでしょう。記事が長い場合は、結局何の話だったっけ?となることもあります。記事の最初で書いた「この記事で言いたいこと」を最後に再掲したり、大事なことをリストアップしたりするのもいいですね。

 

テクニックとして、結論を先に決めておいて、そうなるようなデータを集めるということをやる場合があります。当然捏造ではないのですが、予め話の骨格を作っておき、その骨格に沿ったデータで肉付けするという方法です。

 

結論が既に分かっている場合など、その結論に導くためには、このデータ(記事)とあのデータ(記事)は必要だなと考えながら、複数の記事を統合して一つの記事に仕上げることもあるでしょう。そのような場合は、先に見出しと見出しタイトルだけ作っておき、話の流れを作ってしまうと書きやすくなると思います。

論文とブログの決定的な違い

ずばり、公開前に審査があるか否かです。

論文は査読者(お偉い先生方)による審査があり、掲載可(アクセプト)となった論文のみが公開されます。査読者のコメントに対応して何度も修正するため、権威ある学会誌の場合は、初稿から最終稿まで1年以上要する場合もあります。もちろん、掲載不可(リジェクト)となる場合も多々あります。Natureなど超有名学会誌だと、アクセプト率は10%程度だとか。

 

一方、ブログは自己責任で自由に公開することができます。楽な反面、間違った内容を世界中に発信してしまったり、誹謗中傷を浴びるリスクも背負うことになります。論文と違い、速攻で訂正できるのがせめてもの救いですが。好きな事を書けるとはいえ、その記事を読んで影響を受ける人も少なからずいることを念頭において、責任あるブログ運営を心掛けたいですね。

読者を想定する

記事を書く場合、誰に読んでもらうことを想定しておくかということも実は重要です。そのネタに初めて触れる初心者を対象にしているのか、大抵のことは知っている専門家を対象にしているのか、によって書き方は大幅に変わってきます。

 

論文の場合は、かなり限定された分野の専門家向けに書きますので、専門家にとっては周知の事実の類の説明はほぼ端折ります。しかしブログで初心者向けに書くとすれば、専門用語の説明から必要になる場合もあるでしょう。記事毎に読者は誰か?を考えて、自分が知っていることを読者が知っているとは限らないという前提で書くと、読者にとっては有難いと思います。そういう意味では、自分が知っていることを必ず知っている専門家向けの記事は書きやすいと思います。

 

ちなみに私は大部分の記事を「検索から来てくれた初心者」を想定して書いています。これも記事が長くなる要因かもしれません。ブログ村?には入村していませんが、SNSで仲良くしてくださる方向けに書く場合もあります。この場合はある意味「専門家」想定の記事になります。

まだ非世界共通言語の日本語で書いてるの?

論文は基本的に英語で書かなければ、その分野の研究者としては一流になり得ません。
日本語で書いた瞬間、読者は日本人に限定されてしまいます。世の中には日本語で書いた論文を英語に翻訳するサービス(中には査読対応まで)もあり、商売として成り立っているほどです。

 

ブログでも、もし世界共通のネタで勝負できるならば、英語で書く方がメリットが大きいと思います。日本に限定するよりも読者の母数が爆発的に増える⇒読者数も爆発的に増える⇒広告収入も爆発的に増えるという図式は、取らぬ狸のなんとやらとは思えません。あ、今の私にそれをやる気力はありませんが笑。

まとめ

論文の書き方を参考に、ブログにも応用できそうなことを紹介しました。最後にエッセンスをピックアップします(普段こんなことはしていないので、今日の話を実践できていない証・・・。)

  • 記事タイトルは「記事の具体的な内容が分かる」ように書く
  • 記事の冒頭と最後に「この記事で言いたいこと」を書く
  • 記事を書く動機『「この記事で言いたいこと」を書く理由』があれば書く
  • 記事本文は「再現性」という観点で書く
  • 既存ネタでもあなた独自の考察・解釈・切口・感想・味付けを加えて、新たな価値を生み出す
  • 最後まで読んでくれる読者は少ないと想定し、最初に「読みたくなるような結論」まで書く
  • 読者が知りたい事を想定した答えを用意、最後にリストアップするもよし
  • 自由に公開できる責任を持ってブログを運営しよう
  • 読者は初心者なのか専門家なのかを自問しながら記事を書く
  • 記事を英語で書くと世界は広がる

最後に私が社内の若手に論文の書き方を指導する際、面倒になって、これを読んでおきなさいと言っている本を紹介します。文章の書き方としても参考になると思います。