屋根はどの形がコスト的に有利なのか考察。

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家造り

屋根の形には色々ありますが、例えば、こういう形の屋根が好きだとか、コストが抑えられそうだといって、まず屋根の形を決めてから、そうなるような間取りを考える・・・という方はあまりいないと思います。屋根の形は間取りを決めた後でほぼ自動的に決まってしまうという流れが多いと思います。

しかし、屋根の形は家全体のデザインにかなり影響がありますし、コストにも少なからず影響があります。どのような屋根の形があり、それぞれどのような特徴なのか、そしてコスト的に有利なのはどのような形なのかを知っておくことは重要です。

屋根の形とコストの関係

代表的な屋根の形として、下図の左から片流れ、切妻、寄棟(方形も含む)、というのがあります。それぞれの形でも、勾配や軒の深さなど、屋根の形に関連する項目はいくつかあります。直感的には片流れが最もシンプルで寄棟は比較的複雑な形になり、複雑な屋根ほどコストが嵩みそうです。しかし、「屋根の勾配が極端な形状でなければ、屋根の形によって屋根自体のコストはそれほど変わらない」というのが私の感覚です。

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屋根 – Wikipedia

屋根の勾配とは、屋根の傾斜の度合いのことで、水平距離10に対しての高さをとり、3/10というような表し方をします。3/10以下は緩勾配6/10以上は急勾配と呼ばれます。急勾配の場合は足場や高所作業が必要になるためコストが上がる要因になります。緩勾配の場合は水はけが悪くなり屋根へのダメージが懸念されます。また、屋根の材料によって適用可能な勾配は変わってきます。

さて、屋根の形とコストの関係を見てみましょう。屋根に限らず、コストを見積もる時は「物量」をイメージすると分かりやすいです。屋根の場合は屋根の面積がそれに当たります。物量に施工単価(材料+工賃)をかければざっくりとコストを弾けますので、物量はコストを弾く基礎データとなります。以下の簡易モデルで屋根の面積を計算してみます。

ケース1

  • 正方形の床(10m x 10m = 100m2)
  • 総2階
  • 天井高さ 3m
屋根勾配緩勾配適度な勾配急勾配
2/103/104/105/106/10
片流れ102104108112117
切妻102104108112117
寄棟102104108112117

上表の数値は屋根の面積です。同じ勾配であれば、片流れ、切妻、寄棟(方形)という形はどれを選択しても屋根の面積は変わらないことが分かります。勾配を増やすとそれに応じて面積も増えます。

もう少し考察します。

実は屋根の形が変わると壁の形も変わります。図の青い部分の壁です。片流れの場合は赤線部の壁も考慮する必要があります。先程の屋根の面積に壁の面積も加えてみます。

increase-wall-area
屋根勾配緩勾配適度な勾配急勾配
2/103/104/105/106/10
片流れ582604628652677
切妻552559568577587
寄棟542544548552557
屋根勾配緩勾配適度な勾配急勾配
2/103/104/105/106/10
片流れ107111115118122
切妻102103104105105
寄棟100100100100100

寄棟有利、片流れ不利という結果になりました。下段は寄棟を100として相対比較しています。適度な勾配の場合、片流れは寄棟と比べて15%~18%壁の合計面積が増えることが分かります(屋根の面積は同じなので)。同様に切妻は寄棟と比べて4%~5%増えることが分かります。

ケース2

先程の例は正方形の床でしたが、長方形の場合はどうでしょうか。長方形の場合は、長辺と短辺があるので、例えば同じ片流れでも違う形があり得ます。

  • 長方形の床(12.5m x 8m = 100m2)
  • 総2階
  • 天井高さ 3m
  • 片流れは長辺が傾斜切妻は長辺が妻側寄棟は大棟なし
屋根勾配緩勾配適度な勾配急勾配
2/103/104/105/106/10
片流れ101103105108111
切妻101103105108111
寄棟102105108113118

屋根の面積はどの勾配でも寄棟が不利ということが分かります。ケース1と同様に壁の面積も加えてみます。

屋根勾配緩勾配適度な勾配急勾配
2/103/104/105/106/10
片流れ588610633656680
切妻560568576585594
寄棟548551554559564
屋根勾配緩勾配適度な勾配急勾配
2/103/104/105/106/10
片流れ107111114117121
切妻102103104105105
寄棟100100100100100

やはりケース1と同様に寄棟有利、片流れ不利という結果になりました。ただし、屋根と壁の施工単価は違いますので、単純にこの比率でコストが変わるわけではありません。

我が家の場合、屋根の施工単価は1平米当たり6,400円でした。一方、屋根近傍の壁の施工単価は、土壁と漆喰部分のみで1平米当たり6,000円です。断熱材の分を考慮すると、壁と屋根の施工単価はほぼ同じになります。この場合、屋根の面積も壁の面積もコスト影響は同程度なので、上述の比率でコストが変わると考えられます。屋根コスト+壁コストの15%と言えば、100万円程度のコスト変動になる可能性があります。屋根の形も侮れませんね。

我が家の屋根の仕様や工期は下記リンクで確認できます。

なお、切妻や寄棟は棟の施工がありますので、片流れとのコスト差はもう少し小さくなります。また、雨樋の施工箇所も屋根の形状によって変わります。片流れは雨水が1方向に集まり、切妻は2方向に、寄棟は4方向に集まりますので片流れが有利と言えます。

ケース3

  • ケース2の例で片流れは短辺が傾斜切妻は短辺が妻側
屋根勾配緩勾配適度な勾配急勾配
2/103/104/105/106/10
片流れ103107112118125
切妻103107112118125
寄棟102105108113118
屋根勾配緩勾配適度な勾配急勾配
2/103/104/105/106/10
片流れ590614640666694
切妻557565574584595
寄棟548551554559564
屋根勾配緩勾配適度な勾配急勾配
2/103/104/105/106/10
片流れ108112115119123
切妻102103104104106
寄棟100100100100100

屋根の面積でも、壁の面積を加えても寄棟有利の結果になりました。片流れについてはわずかな差ですが、ケース2の方が有利です。つまり、片流れは長辺を傾斜するのがコスト的には有利です。

まとめ

単純な比較でしたが、以下のことが分かりました。屋根の形とコストの関係を頭の片隅においておくと何かの役に立つかもしれません。

  • 屋根の面積は屋根の形によって5%程度の変動(同じ勾配の場合)
  • 屋根+壁の面積は、寄棟<切妻<片流れ
  • 屋根+壁の面積は、片流れ=寄棟+15%程度(適度な勾配の場合)
  • 片流れは長辺を傾斜するのが有利(長方形の床の場合)

今回は屋根の形からコストについて考察してみました。実は屋根のコストを抑えたいなら形よりも材料を考えるのがよさそうです。それについてはまた今度。

番外編

豪雪地帯では屋根からの落雪や雪下ろしへの影響を考えて屋根の形を決める必要があります。雪を落としたい方向、落としたくない方向。急勾配の屋根に上って雪下ろしをするのは大変危険です。

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