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ドクターMの家造りのすすめ

伝統工法、無垢の木、竹子舞、漆喰、いぶし瓦の家の主より

土壁の諸性能を解説。断熱・蓄熱・調湿・消臭の4点セット。

土壁を選択した2つの理由と4つの特徴

我が家に土壁を採用した理由は2つあり、調湿性能と意匠です。土壁の調湿効果のおかげで、年中爽やかに過ごせる、梅雨時期でも室内干しで洗濯物が乾く。これらが実現可能な事を様々な見学会で体感して土壁の虜になりました。快適に感じるかどうかは、温度だけではなく湿度も重要だということに気付きました。また、意匠面では、木と漆喰が醸し出す何とも言えない和の雰囲気に憧れました。そんな土壁ですが、どんな特徴があるのかお話します。

 

土壁の特徴①断熱性能

実は土壁の断熱性能は低いです。少し意外ですが、土壁の断熱性能は一般的な断熱材の1/20~1/10ほどと言われています。たしかに、昔の土壁の家って寒いというイメージはありますよね?これは昔の家は隙間が多くて気密が低いことと、土壁自体の断熱性能が低いことの二つの要因が重なったものです。

我が家は、気密はともかく、少なくとも土壁の断熱性能の低さをカバーできるように、断熱材の厚さを厚くして、外断熱方式にしました。断面図を見ると土壁と柱の外側が断熱材ですっぽり覆われています。土壁の厚さは100mmなので、壁全体の厚さとしては250mm以上になります。少し贅沢な断熱仕様と言っていいと思います。このくらいしなければ特に冬の寒さが不安でした。夏は調湿性能によりある程度快適であることは分かっていましたので。

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土壁の特徴②蓄熱性能

土壁の優れた特徴の一つは、蓄熱性能が高いということです。一度温まると冷めにくい、一度冷めると温まりにくいというものです。熱容量という数値で評価でき、この特徴は鉄筋コンクリートと似ています。この特徴を上手く利用できれば、冷暖房の効率を上げることもできます。

具体的な方策は、適切な軒の深さと窓配置による日光の活用です。もちろん断熱はしっかりした上でという条件です。我が家は、夏場は室内に入る日光を遮り、冬場はできるだけ部屋の奥深くまで日光を入れられるような計画にしました。特に土壁が苦手な冬場の対策として、昼間に日光を当てて土壁に熱を蓄えることが有効だと思います。

これはパッシブ方式(受動的)の方策ですが、アクティブ方式(能動的)の方策もあります。土壁の中に細い管を這わせて、温水をその管の中で循環させ、土壁を温めて輻射熱で部屋を暖めるというシステムです。秋から春までずっと安い深夜電力で温めた温水を循環させる仕組みのため、ランニングコストに疑問があったのと、実績が少なかったため、我が家では採用しませんでした。我が家はオール電化ではないので安い深夜電力の恩恵を受けられませんし。しかし、実際にこのシステムを導入した方の体験談を聞く限りでは、オール電化ならば入れる価値はあると思います。

なお、蓄熱性能を発揮するためには、ある程度の土壁のボリュームが必要です。そのため、石膏ボードの表面に薄く漆喰や珪藻土を塗っただけでは蓄熱性能を期待することはできません

土壁の特徴③調湿性能

調湿性能は土壁の目玉性能と言えます。我が家のデータで示すことができないのが残念ですが、とにかく湿度が安定していて快適です。夏場は家の中に一歩足を踏み入れるとひんやりした空気感が分かります。梅雨時期に室内干しで(エアコン・除湿器なしで)洗濯物が乾くというのは本当です。冬場は室内で静電気が発生しません。

この調湿性能ですが、石膏ボードの表面に数mmの珪藻土を塗っただけでもある程度の効果を期待できます。その際、珪藻土に混ぜる接着材の役目をする材料にも注意が必要です。何を混ぜるかによって調湿性能が大きく変わるようです。自然由来の接着剤がお奨めです。

なお、漆喰の調湿性能は低い(JISでも調湿材料として認められていません)のでお気を付けください。土壁の表面を漆喰で仕上げるならば、土壁の部分が調湿性能を発揮してくれます。我が家はこの方式です。石膏ボードの表面に薄く漆喰を塗る場合は調湿性能は期待できません。

土壁の特徴④消臭性能

これは住んでみて分かったことですが、土壁には消臭機能があります。部屋で焼肉やお好み焼きをしても、翌日に全く臭いが残りません。土壁の表面を拡大するとかなりデコボコしているので、臭いを吸着しそうなイメージはあります。しかし、吸着した臭いの元を分解する機能まで備えているようです。消臭剤として用いられる活性炭と同じ仕組みですね。

土壁ができるまで。絶滅危惧種で間違いなし。

あまり見る機会が無いと思いますので、土壁ができるまでの過程をお見せします。残念ながら、左官屋を中心とした土壁関連の業者がどんどん減っていて、本格的な土壁を採用するのは難しくなっているのが現状です。

効率やコスト重視の住宅産業において、これに逆行する湿式の塗壁(土壁や珪藻土や漆喰など)は敬遠されています。ハウスメーカー等で土壁を使う場合は、石膏ボードの表面に漆喰や珪藻土を塗るパターンがほとんどだと思います。本格的な土壁は、塗っては乾かしという工程を繰り返すので、工期がかなり長くなってしまいます。

土壁用の土を作る

現場工事が始まったある日、我が家の現場にプールのような箱が作られました。ブルーシートで覆われています。その中には地元の赤土に細かく刻んだ藁を混ぜて発酵させた泥上のものが入っていました。これが土壁用の土になります。世の中にはこのような土を作る土屋という業者がいるのですが、ご多分に漏れず淘汰が進み、土屋を探すこと自体が難しくなりつつあります。
土壁用の土ですが、発酵が進むと強烈な臭いを出すようになります。例えて言うなら、牛糞?え?この香ばしい壁の中で暮らすの?無理無理。。。という感じです。

竹子舞

土を塗りつける下地は、竹子舞です。柱や梁の間に細い竹を組んで壁の形を作ります。これが伝統的な方法です。組み上がった竹子舞は、伝統工芸品の美しさを感じます。なお、竹子舞屋も絶滅危惧種です。
この後土壁を作っていくので、壁内配線をするものは先行して施工しておく必要があります。我が家の場合、電気配線、電気・ガスコンセント、スイッチボックス、LAN・同軸ケーブル用配管、排水管、水道管、エアコン配管などを先行施工しました。

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荒壁

いよいよ竹子舞に土を塗って壁を作っていきます。土壁は何回かに分けて塗り重ねていきますが、最初に塗る壁のことを荒壁といいます。壁が付いてくると空間が仕切られて部屋のサイズ感が分かってきます。でも臭いが・・・牛舎の中にいる気分です。あまりに強烈で長居できないほどです。

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記念に手形を・・・付けることも無く、乾くのを待ちます。ただひたすら待ちます。・・・いつまで待てばいいの?というくらい待ちます。その間にできる仕事はないようで、毎日現場に足を運んでも何も変化がありません。というか誰もいません。

乾いてくると、水分が抜けるので土壁が収縮します。その結果、壁の周囲は隙間だらけ。壁自身もバリバリにひび割れています。大丈夫なのか?これが正常なのか?という気分になります。でも臭いは随分収まってきました。

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大直し、中塗り

荒壁を造った土に少し砂を混ぜた土を使って、荒壁の表面を整えていきます。荒壁よりもきめが細かい表面に仕上がります。この作業が大直しです。塗り終わったらまた乾かします。荒壁を塗って大直しが終わって乾くまでで丸2か月ほどかかりました。

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漆喰を塗らずに土壁のままにしておく部屋は、もう一度、さらにきめが細かい砂を混ぜた土を塗ります。中塗りと呼ばれ、これが仕上げ状態となります。中塗り用の土を変えることで壁の色を変えることも可能です。土の色にも色々あるようです。色素を加えて強制的に色を変えたわけではありません。和室の壁は緑っぽい色の土を使って落ち着いた雰囲気に仕上げました。

仕上げ

室内側の土壁表面に漆喰を塗って最終仕上げをします。ここは左官屋の腕の見せ所です。塗り方によって表面の仕上げを変えることができます。我が家の大部分の部屋は、ぱらり仕上げと呼ばれるざらざらした感じの仕上げにしました。漆喰に少し砂粒を混ぜています。光の当たり具合によって表情が変わります。キッチンの壁は漆喰のみでツルツルの表面に仕上げました。汚れが付きにくくするためです。

漆喰壁が完成すると一気に部屋の雰囲気が変わりました。これぞ求めていた茶色と白色のコントラストです。

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住んでみた感想(2016年10月時点)。

我が家に引越してから夏を3回、冬を2回過ごしました。調湿効果により、梅雨時期でも驚くほど快適です。室内の快適性は温度と湿度の関係に依存することを体感しています。真夏でも明らかに涼しいです。これは土壁の影響だけではなく、風通しも影響していると思います。近所の家がエアコンを使い始める時期と我が家が使い始める時期は明らかに1か月以上違います。さすがに外が猛暑日で風の無い日はエアコンは必要ですが、風さえあれば真夏でもエアコンは不要です。

一方、心配していた冬ですが、これまで住んでいたマンションタイプの家と遜色ない感じです。当然暖房は使います。断熱効果と蓄熱効果の合わせ技が効いているのか、真冬で外気温が零度近くても朝の室温は13度前後です。

土壁に対しては、壁がポロポロ崩れないか、耐水性はどうなのか、柱との間に隙間ができないかということも気にしていました。結論としては全く問題ありません。

壁は崩れないです。爪を立てて触ってみても爪の方が欠けそうなほど固いです。物をぶつけても物に傷が入るだけで壁は無傷です。また、トイレや洗面所で水がかかった程度では何も変化はありません。

隙間対策として、柱のちょうど壁の表面にあたる部分にちりじゃくりと呼ばれる溝を予め彫っておきます。そこに土壁が入り込み、収縮しても隙間ができないようにしています。伝統工法の技ですね。

何か問題はないかと探してみると・・・
洗面所で化粧品がピッと飛んで漆喰壁に付きました。これが取れません涙。変な色がついたままです。表面がざらざらしているからです。水回りの漆喰壁はツルツルの表面で仕上げることを推奨します。

土壁のコスト

最後にコストをまとめておきます。単位がバラバラで若干見難いですが、コストの2/3は室内の仕上げ塗りにかかっていることが分かります。土壁以外に断熱材や外壁材の費用もかかりますので、普通の壁のコストと比較すると、土壁分が丸々増加ということになりそうです。でも投資効果は高いと思いますよ。

名称数量単位単価金額
竹子舞、荒壁 32 18,000 576,000
大直し 1 250,000
外部漆喰 32 m2 11,000 352,000
内部漆喰、中塗り 117 17,000 1,989,000
計(税抜)   3,167,000

 

壁に関しては以下の記事もご覧ください。

www.doctor-m.net

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